トレステフォトコンテスト2022結果発表

たくさんのご応募を誠にありがとうございました。
応募総数4281点の中から選ばれた入賞作品を発表いたします。

 

 

フォト部門総評

神山霊峰不尽にLENSを向けゆくことは、写真者自身に何を意味付けるのであろう。

有名山故か。日本一故か。みんながLENSを向けるからか。

鉄斎なる画家はふじやまは、人間の内側を見抜き浄化する山と記す。

人間の命は、限定されているがその限定から発する永遠への憧憬。

被写体なるふじさんと写真者の関係絵図。

審査員長は、その写真者の精神的位置を判断する職業。厳しくそして冷静に真剣に判断する。

細部を見抜く全体を見抜く。撮影現場を確認する。あらゆる作品上の質を実証する。

責任上審査員長とは結果は残酷でも容赦なく上中下を発見しなくてはならない。

どんな表現媒体でも大切は個性美一点である。

「独写」の二文字こそ審査の最大の対象である。

一人だけの世界。一人だけの写真。

例えコンテストに入らずとも個美の一点なら私の記憶には残っている。

表現者のプライドと宝物は「独写」ということを気づき学んでほしい。

今回コンテストは、止めどなく有難い程に応募作品が多数であった。

故に気になる作品も多く捨てがたい作品がかなり残り続けた。

どうしても捨てきれぬ作品があり、準グランプリは2点にせざるを得ない状況下。

(トレステ富士山フォトコンテスト審査員長:池谷 俊一)

 

 

フォト部門
グランプリ

「雨後の富嶽」上野祐司 様(神奈川県)

 

作者コメント:

豪雨の後、雲間より顔を出した富嶽
何か恐れさえ感じさせる光景でした。

寸評:

何という二次元の美学。
富士山写真の最高位の詩歌。乱脈なる不二。
今まで出品されたことのない強固な個美。
視る者を一瞬ハッとさせるそのスケールは、他作品を圧倒しつくした。
温度や風向や雲海の敏感さ。それら原始的次元を、一気に印画紙上に写しこんだ。
その写真者の精神性は、決して平面的でなく脆弱でなく徹した風狂一瞬間。
今回最高位のすごいパワーである。

 

 

 

 

フォト部門
準グランプリ

「富士が見守る商店街」
稲垣 健一様(愛知県)

作者コメント:

雪が残る商店街。
道の先には商店街を見守る富士山がそこにいました。

 

寸評:

富士吉田商店街は、近頃様々の写真家に興味を持たれているが、この作品は人物の位置が良い。アスペクト。
人間の大きさが印画紙の大きさに対し適度。
無秩序に張り巡らされた文明の恥部電線。文明と富士山という文化の象徴の超アンバランス作品。
見下ろしている富士山は、人間界が作り出したこの無秩序な文明をどう見ているのであろう。
富士山は神の山であるからには、人間という煩悩の塊をどの次元で判断しているのであろう。
自然対人間。あらゆるこのテーマを、ドキュメンタリー社会派で取り上げた写真者の知力は捨てがたい。

 

 

 

 

フォト部門
準グランプリ

「自然の芸術」
飯田 龍治様(静岡県)

作者コメント:

撮影前夜、一月の厳冬期にしては珍しく麓は土砂降りの雨だった。
富士山の雪はすっかり融けてしまったが、宝永火口馬の背まで登ると過冷却現象の雨氷により、枯草に見事な氷の花が咲いていた。
後にも先にもこんなに見事な自然現象は見たことが無い。
姫様からの贈り物、生涯忘れることができない貴重な一枚となった。

 

寸評:

自然は最大の芸術家である。その一行を具体的に作品化した。
今回応募作品の中で唯一富士山を季語化。その静謐さは俳階師。
この作者は、写真俳階の次元を行脚した。
間近で親が幼子をよくみる如く、冷静に隅々まで富士山頂上付近を見ている。
その目線は極めて細部に到達。
写真の四隅を精査し網羅し、寒固状況下にも、必死に生き続けようとする植物達へのひたぶるな愛情が迸っている。
現場を、何年間も熟知していなければこの風景時空に辿り着けはしない。
「冬萌に日の射す福慈や世を澄ます。」
人間の心を打つ大自然を、高度な撮影技法で白界を己の生き様と運命共同化してゆく絵画では描けぬ名作。

 

 

 

 

 

 

 

フォト部門
優秀賞 2点

「宵の富士桜」吉本 美紗保様(北海道)

作者コメント:

初めて見るわに塚の桜。夜になりライトアップされると、それまで雲で覆われていた富士山が一瞬姿を現した。
その荘厳な佇まいが、夜桜をいっそう美しくした。

 

 

 

 

 

 

「モルゲンロード」大畑 栄司様(大阪府)

作者コメント:

剣ヶ峰のモルゲンロード
朝焼けで燃える剣ヶ峰
最高に綺麗です

 

 

SNS部門総評

何百何千という写真作品の群。

その一作一作を丁寧に診ぬいてゆく。

何度もゆったりと視てゆくと、いくつかのパターンに明確に分析可能だった。

しかし一作は類同的ではあっても、一気可成に素早く判断などできない。

応募者の結果を待ちわびる人のKAOに浮上する責任からに他ならない。

視覚表現を文字や言葉で表出できないが、それでも一作一作は応募者の深い思いが輝いた作品で在る以上、決して弱眼力では審査はできない。

プロ級作品、セミプロ作品、アマチュア作品等と大きな枠で括るが、初心者でも良作は良作。

ベテラン作でもNGはNGであることを再確認して丁寧に審査していく。

清風名月の審査をするのは、審査員も富士山を撮影し失敗し、類例的な落度を充分体験しなければならない。

「ふじさん」という永遠性に対して、限定された人生時間では、どうにも成立しない作品次元だが、富士山に対して孤高的発想から膝まずいた作品志向が大切である。

4000点の中から先ず500点を選び出し更にそれを100点にキャスティングし、更にまたそれを10点に絞り込んで選出する。

緊張感と作品が軽軽でないこと。類同的類例的類似的作品でないことを徹底して選別する。

他者との差異がどう展開しているのか。写真史に対し応募者がどう向き合ったか。写真の陰影礼讃が所有されているのかどうか。写真は光と影の2次元表現である。

写真美は微妙な光の分量によって成立する。特に日本の頂点に位置する富士山は、人々がなぜ手を合わせる山であるのか。

神山として台風寒さ暑さのあらゆる自然環境に対し微動だにしないその強烈な姿が、人々の心を浄化してゆく。

独自の角度の美が撮影者にとって必要なのは、他者と同じでないというコンセプトの鮮明がある。

自然界は一秒とて同じところにはいない。雲は流れ空気は流れ太陽は移り刻々とその表情を露にする。

富士山をごく近くで撮影する方法。富士山を遠景から撮影する方法。富士山を360度回って撮影する方法。

富士山を飛行機から俯瞰で撮影する方法。

無限な撮影場所によって成立していく富士山美は、今もこれからの人々にとっても被写体として、永遠に関係性を持参してゆくであろう。

 

 

SNS部門
グランプリ

 

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寸評:

作品コンセプトの鮮明は、オリジナリティ二つの反射光。
富士山を撮影する場合。様々な写法があるUP、MP、FS、LS。
近寄るべきか引くべきか。カラーなら赤か青か黒か白か黄色か。
シャッター時は昼か夜中か場所は山梨側か静岡側か、神奈川側か、それとも他県側か、空か田んぼか海からか道からか。東京というビルの遠景からか。
あらゆる場所から写財化される富士山は、美しい視覚の中心軸として決して疎んぜられることはいつの時代もない。
頂上と光束。いわば二つの要素だけに簡素化したパールピアス作品は秀作。

 

 

SNS部門
準グランプリ

 

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寸評:

文明力は、写真の特性であり強みである。そこが絵や書や版画との差異。「ゴッホ富士」と名付けたいような作品。
長時間露光は、人間の目では不可能。この作品は、妙に無限なロマンティシズムを人々に与える。
医学的に人間の眼は、瞬きをしなければものは見えない。
CAMERAは人間よりその点で秀悦であるが、その特性をこの写真者は見事に成立させた。
回転してゆく星たちが、世俗上空で悠々と楽しんでいるようだ。
憚りながらゴッホは、日本人ではなかったかと大声で叫んでみたくなるような天文学的で形而上学的な秀作。

 

フォト部門
優秀賞 3点