トレステ富士山フォトコンテスト2023審査結果

2016年から続くトレステ富士山フォトコンテスト。
今年も独自性溢れる素晴らしい作品が満載♪
たくさんのご応募ありがとう御座いました。

審査員長である池谷俊一氏が厳格なる審査を実施し、
多くの素晴らしい作品から輝くものを選りすぐりました。
おめでとうございます!

 

 

フォト部門総評

レンズ内に自分をどう表出するか。この場合の自分とは富士山を現わしている。

富士山そのものに何か他の要素をプラスするか。または全く富士山のみに徹し得るか。次に決定すべきは画角である。

富士山に近寄りきるか。中景点で撮るか。はたまた遠景でシャッターを切るのか。時刻は真夜中か。はたまた早朝か。昼間か夕景か。

シャッターを切る前に頭の中で写真の絵コンテを描いて欲しい。

写真は文明という魔術である。

音楽絵画映画彫刻とも異なる写真の静止画は、他の表現とは全く違う語りかけをする。

写真は免許証パスポートが生命線である以上、写真の正体は記録である。

絶対的静止画像、一見単純に見えながら、作品となると大変な厄介を伴う。

現在過去未来の時間の流出を、静止固定するという知的作業。

撮影者と富士山の相対性は時間を写真家自身が圧縮することである。

大胆でありかつ神経質に徹すること。写真が光と影の規定であることも忘却してはならない。

生命線の陰翳礼讃を忘却しないこと。

そして写真の審査の対象は、個美そのものにある。

他人の目よりも審査員の目よりも、大切なのは個美の徹しである。

(トレステ富士山フォトコンテスト2023 審査員長:池谷 俊一)

 

 

フォト部門
グランプリ

「古里の風景」としぼう 様(静岡県)

 

作者コメント:

降雪の朝、古民家に雪が積もった時の写真です。御殿場を感じさせてくれる原風景です。

 

寸評:

空は青一色の濁らぬ冬晴れ。

富士山は何ひとつ上空になく白雪一色。

農家らしき建物の屋根さえ眩しく白を受け入れている。

多分2月の撮影であろう。

画面上すべて白いが木々の黒色も決して哭くことない分量で心地良い。

この写真は明治大正を彷彿とさせるだけの力作である。

 

 

 

 

フォト部門
準グランプリ

「夏の山中湖」
キキたん様(神奈川県)

作者コメント:

雪が残る商店街。
道の先には商店街を見守る富士山がそこにいました。

 

寸評:

今回出品作の中で珍しいスナップ作品。

素材要素は富士山と白鳥と少女。

その三者の位置とサイズが微妙な美学を作り出している。

このスナップは否応なしに審査委員長の私の目を捉えた。

少女の身体の捻りは、日本画の名作を彷彿とさせる。見返り美人のそれである。

少女白鳥富士山それぞれの目線のあり方が、この作品に質を与えている。

微笑する少女を見守るように、後方の富士山が画面にさらに緊張感を与えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

フォト部門
優秀賞 3点

「初秋のダイヤモンド」菅沼 英已 様(静岡県)

作者コメント:

初秋のダイヤモンド富士を追いかけて小富士に出向いた。

まだまだパワフルな太陽の光を受けて黃葉が鮮やかに輝いておりました。

 

寸評:

富士山頂に太陽の光束放射あり。

画面上に流出する雲の群れ。レンズ手前の前景に輝く植物。

三つの要素が画面上に領ち合いながらほどよく収まっている。ど

んな苦行の人生さえ、一気に消えてしまいそうな写真詩人の叫びは凄い。

 

 

 

 

 

「潮の紋様」okkakefuji 様(神奈川県)

作者コメント:

湘南海岸の夕方の一幕。

波が砂浜に押し寄せ、引きながら砂に染み込む時に潮と夕焼けが織りなす紋様です。

波が押し寄せる度に描かれる紋様が変わり見ていると飽きることがありません。

 

寸評:

富士山撮影は、よく湘南の海越しにシャッターを切られる。

この場所は審査員長の私も時々撮影する。

典型的なロングショット。黄昏の海は寄せては返す。

それは縦糸と横糸の布を紡ぐことである。

観世水のごとき写真は美学である。

 

「春風にそよぐ爛漫桜と富士の山」fujio 様(神奈川県)

作者コメント:

桜が満開となった岩本山公園で、風の中にそよぐ桜越しの富士山を撮影しました。

桜も嬉しくてスイングしているようでした。

 

寸評:

桜と中央の富士山。構図は徹底したトンネルビュー。

四隅を覆い隠した写真文法は、富士山を浮上させるためのものである。

上部の桜の枝は大きく揺れ動き春風とのタワムレを表出している。

1枚の写真の中に静止画と動画の混合は、この作者のセンスの良さを具現化した。

 

 

フォト部門
佳作 3点

「真珠の輝き」諏訪 幸子 様(静岡県)

作者コメント:

真珠の輝きはとても上品で美しい

感動の瞬間です。

 

寸評:

満月と山頂。

ドキュメンタリーの映画を見ているようだ。

山頂と月とのかすかな感覚は、この写真の質の高さを表している。

長玉レンズの精緻が見事に大自然の動きを写し止めている。

脚底から途方もなき宇宙の詩的暗示。

この作者は強烈さを具現化して素晴らしい。

 

 

 

 

「乱」飯田 龍治 様(静岡県)

作者コメント:

御殿場に住んで40年、こんなに不気味な吊るし雲は見たことない。気象学的にもあり得ない様な吊るし雲だった。
撮影したのは2020年2月15日、折しもこれから起こるコロナ禍の予兆だったのかもしれない。

 

寸評:

唖然としか記述できぬ作品。

本当にこの世俗に龍はいたのである。

隔意できぬごときの天空の雲の掛り方。

見る側も不気味さえ感じる。

甚だ畏怖するすべき雲のあり方は、誰しも緊張せざるを得ない作である。

「頂点」あき 様(埼玉県)

作者コメント:

ぼーと飛行機に乗ってる時ビックリする景色が

 

寸評:

超俯瞰図の富士山。

どこかの銀行のカレンダーのごとき作品。

BWにしたことで、今回一作しかなかったゆえに得をしている。

平凡だが個性という点で作品を評価する。

 

 

SNS部門総評

被写体の富士山に対し、明快に写真化する事は本当に難しい。

作品化する場合、どうしても過去の作品と系統的になってしまうからである。

対象が日本一の名山。それをどう二次元にするか。

そして、類同的次元から脱出するには何が必要か。写真史を学ぶことで己の写真文法を確立できるかもしれない。

過去作品との関わりを持参しないためには、他人の目より審査員の目より、己の好きな富士山作品の地平を発見してほしい。

壮大なる名山。天地を讃歌するには、自己創意の次元に徹して踏み込むこと。

今回の審査でやはり気づいた事は、ある種の富士山作品の規則的なパターン。

写真内に配列された美学の妙なる仲間的発想。

決して他人と同じではないという表現の約束の厳守が希薄。

数の中に秀作の作品は多かったが、個性豊かな作品が唯一審査委員長の私の目に映じた。

つまり表現の骨子は個性という一人の問題にある。

 

 

(トレステ富士山フォトコンテスト2023 審査員長:池谷 俊一)

 

 

SNS部門
グランプリ

 

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寸評:

なんと見事な美学であろう。

登山者の灯の連路が水面に映じている。中央部に太く強く長い光線。

富士宮市と富士吉田市両側からの登山者の灯。長時間Bの作品としても秀逸。

水面に映じるすべては、当然に実像より濃くなるが、それがうまく画面の引き締めを啓誘している。

今回個性的という美点で、突き抜けた作品。阻むものなきレベルである。

SNS部門
準グランプリ

 

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寸評:

神統譜を絵ではなく写真化した名作。

卑弥呼伝説を、作者は写真に重ねている。

鳥居と注連縄と後方に神山富士。

撮影者もその写真を見る人も軽忽にできぬ作品。

神山への作者のひれ伏しが発露した個性美。

 

SNS部門
優秀賞 3点

 

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寸評:

この撮影者の秀抜はズバリ写真知性。

個美の表象を高次元で成立させているのは、むしろプロとも言い切れる。

アマチュアにありがちな劇的さよりも、極めて正統派の写真アプローチ。

富士山に対する尊敬度は作品中の気品美で覆われている。

大自然への作者の道義心。夥しい厳かな純化。

撮影規定は、真正面から通釈された地球上の循環。

その静謐は一本の立木と山襞との調和度にあり見事である。

画面上に陰翳の配列は今回の作品の最高位であった。

 

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寸評:

いわゆるマボロシノタキには水はないが、大自然への畏怖の念あり。

富士上空にはあたかも風の神の出現のごとく一瞬雲が流れている。

 

 

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寸評:

作品下部の建物の屋根が、中央の富士山にまっすぐ伸びている。

富士山は曲線であるがこの作品のおもしろさは自然界の曲線と人間界の合理的な直線との文化と文明の組合せがおもしろい。